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専修大学 社会知性研究会

「社会知性の開発」(専大HP参照)を目標に、週1回、ディベートまたはディスカッションを行うサークルです。

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活動報告⑨知と認識−同性愛者− Cチーム発表

専修大学社会知性研究会報告会(11.06.2014)
報告者:Y氏

知と認識−同性愛者−

1)導入
 「同性愛者」(Homosexuality ; Homosexualité)は近代が発明した言葉ではない1。それはいつの時代・いつの地域にも存在してきた。しかしそれは、往々にして忌み嫌われ、「自然の原理に逆らう」などというむしろ超自然主義的な発想を自然主義に置き換えて論じられもする。
 では果たして彼らは「自然の原理」を破っているのだろうか?果たして異性愛こそが「正しい」愛なのだろうか?思うにそこには答えは無いであろう。しかし答えが無いが故にそれは禁じ得るものでは無いのではなかろうか。
 

『同性愛者』とは…
「同性者」を性的対象とすること。またその関係2。
 ※以前「同性」を愛し、「同性」に性欲を感じる異常性欲の一つ、との定義


1、Michel Foucault(1926-1984) へのオマージュとして反意的に使用。原文« une chose est certaine, c’est que l’Homme n’est pas le plus vieux problème ni le plus constant qui se soit posé au savoir humain. L’Homme est une invention récente, ce n’est pas autour de lui et de ses secrets que l’on tend obscurément le savoir à rôder »Les mots et les choses

出典:広辞苑第4版 岩波書店(1991)

3、
オーストリア生まれのKarl-Maria Benkert氏の男性間の性行為を処罰する刑法(の条文)の廃止を求めて作られたパンフレットから使われ始めた。Box Tutle bulletinホームページよ


4、Michel Foucaultはこの1869年の出来事から、初めて「同性愛」というカテゴリーが生まれたとした。







2)歴史(古代−近代)
« ヨーロッパ »
 「ホモセクシュアリティ」すなわち「同性愛者」という語は、1869年にハンガリーの学者3によって造られた4。確かに言葉の起源(フーコーによればカテゴリーの起源)は、19世紀後半ではあるが、「同性間」の愛情表現あるいは性行為は人類の歴史と同じくらい古い。例えば、古代ギリシアでは神話上の神々が同性愛を楽しみ、あるいは「同性間」での「ねたみ」により人をも殺している。当時の人々は、神々を人間のイメージとして描き出し、その神々の行動を人間の欲望や欲情の鏡として認識していた(Aldrich [2006 ; p.29])。つまりは人間そのものが「同性間」における「愛」を望むことがあったということである。またHuppertsは古代アテネにおいては、男性が女性を愛する様に男性(特に少年)を愛す者とみなされており、それらは「エロス」の二つの形でしかなかった(Aldrich [2006 ; p.33])という。



 
 さて、古代から「同性愛」の起源はあったが、中世においてその認識は変化する。「生殖活動」としてか、「そうでない」かの違いでしかなかった「同性愛」が、13世紀には宗教裁判所により処罰の対象とされていた。その背景は、旧約聖書・新約聖書の普及(特に新約聖書)が大きな貢献をしていると言えるだろう。つまり、旧約聖書において「同性愛」について書かれている最もポピュラーな箇所として『創世記』のソドムとゴモラの逸話が、キリスト教の普及と重なって「禁止されたもの」という強い認識・影響を及ぼしたとされている5。
 さらには6世紀から10世紀においては「悔悛総則書」というもので、具体的な罪が司教に示されていた。後に『グラティアヌス教令集』を経て教会法へと変化して行く。
 このように「同性愛」は当時の宗教観とその普及の被害者となって行った。
 
 しかし、宗教的・哲学的な出発に始まった「同性愛嫌悪(Homophobie)」は自然科学の発達による対象への科学的なアプローチと、18世紀以降の病理モデルの発展がそれまでの嫌悪感とは異なる性格を生み出した。つまり「同性愛」とは「病気」となったのだ6。

« 日本 »
 日本はあらゆる面で中国7の影響を受けている。「同性愛」においても、中国文化の伝来8が日本に「同性愛」の正当性をもたらした(とされている)。によれば僧侶達は女性との肉体的接触は禁じられていたが、寺の中で奉仕する若い「稚児」とは肉体的関係を持っていたという。さらに、その「稚児」が美しければ菩薩の化身とさえされ、それとの交わりは崇高なものへとなった。
 このような男色は、「禅」の精神にも繋がって行った。この男集団の固い絆と厳しい規律を重んじる「禅」の精神が仏教とつながり、その後の「武士階級」にも受け継がれて行くこととなった。

 しかし鎖国を迎えた日本においては西洋文化の受け入れを余儀なくされ、同時に西洋において「ソドミー」とみなされていた「同性愛」は罪されることとなる9。その後の日本においては、「同性愛」への軽蔑的思想が確立されて行くこととなる。


5、『創世記』において、ソドムとゴモラの逸話19章1−29節の中で描かれている。

6、
ただし、それまでの教会法の様に「同性愛」を犯罪とはみなさず、合法化したのもこの時期において(Robert Aldrich 2006 ;pp.103−123])。

7、
中国においていは『道教』と『儒教』の関係。前者は「陰」と「陽」の交換が専ら「同性間」では「陽」の交換でしか無く、「同性愛」が独立して考えられることは無かった。一方後者は、社会的ヒエラルキーによる女性の社会的排斥が男同士の結びつきを強く容易なものにしていった。Adrianによれば、日本においては『道教』の二つの関係が互いに結びつき発展する性についての考え方が、『儒教』の男性中心的な社会秩序が持ち込まれたことになる。

8、
Adrianによれば、真言宗の開祖、空海によって「同性愛」の正当性は持ち込まれたとされている。ただし逸話でしか無く、さらにはそれ以前の日本にも、やはり「同性愛」は存在していたであろう(Aldrich2006;p.303
])。

9、
1873年『鶏姦罪の規定による肛門性交の禁止』





3)現代の状況
 古代から近代にかけて、「同性間」の関係は宗教上の理由から「罪」とされ、市民革命を経て個人主義的な価値観が「合法」の時代を生むことになった。しかし、その合法化を誰もが歓迎した訳ではなく10、むしろ多くの者に「同性嫌悪」が根ざして行ったことは現代が抱える事実である。
 
事実、2013年2月にフランスでは「同性婚」が認められたが、それに伴う反対デモはフランス全土で展開された。
同様の「同性婚」に対するデモは世界中で起きている。

 そしてそのような「同性愛嫌悪」的対応は、国家権力を利用した違法な処罰にも見て取れる(資料1、2)。

 同時に「同性愛者」の権利拡大に向けて法的な取り組みも見受けられるのが現代の特徴である(資料3、4)。


※では日本はどうか?
 2013年日本で初めての「同性結婚挙式」が東京ディズニーランドで行われた。法律で認められていない関係とはいえ、この当事者の行動は社会的インパクをもたらすとともに、日本における『シビル・ユニオン』の可能性を示したと言えるのではなかろうか。

 


10、アンゼム・フォイエルバッハによれば(1775-1883)「…ソドミー…による婚外性交は道徳の戒律に対する重大な違反だが、罪としては国内法の範疇には無い」としたが、それに対する反論として、「権利侵害ではないが、直接的・間接的にそうした侵害を引き起こす」という者もいた(引用:Isabel V Hull, Sexualty, State, and Civil Society in Germany, 1700-1815 [p. 357](Ithaca, NY 1996))







 






以上、ご清聴ありがとうございました。
<参考文献>

伊藤悟著 2000年『同性愛がわかる本』明石書店
齊藤日出夫 1999年『セクシャル・マイノリティのアイデンティティ・ポリティクスについて』
                       慶応義塾大学大学院社会学研究課:修士論文
タムシン・スパーゴ 2004年『フーコーとクイア理論』岩波書店
新村出編 1991年『広辞苑第4版』岩波書店
ルイ=ジョルジュ・タン編 2013年『同性愛嫌悪<ホモフォビア>を知る辞典』明石書店
ロバート・オールドリッチ編 2009年『同性愛の歴史』東洋書林

<外国書文献>
Boswell John, Christianism, tolérance sociale et homosexualité, Paris, Gallimard, 1985
Eva Cantarella, Bisexuality in the Ancient World, New Heven trans. C.O.Guilleanain 1992
Félix Buffière, Eros adolescent. La prédérastie dans la Grèce antique, Paris, 1980
Isabel V Hull, Sexualty, State, and Civil Society in Germany, 1700-1815 , NY, Ithaca, 1996
Louis Petit de Bachaumont, Mémoires secrets pour servir à l'histoire de la République des lettres de France, London, 1783
Michel Foucault, Les Mots et les choses, Gallimard, 1990


<参考サイト>
Le Monde
http://www.lemonde.fr
BBC
http://www.bbc.com
Box Turtle Bulletin
http://www.boxturtlebulletin.com
ilga
http://ilga.org/ilga/en/index.html


<配布資料>
資料4 http://ilga.org/
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